田中けんWeb事務所

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日刊田中けん

少子化は必然。これは政治力で解決できない

家計が不安、韓国少子化 政府、経済成長を懸念
2010年3月21日2時17分 asahi.comより


 【ソウル=稲田清英】少子化に悩むのは日本だけではない。出生率が世界最低レベルにまで落ちているのが韓国だ。2009年も前年より下がった。教育費などの重い負担や、90年代末から急速に進んだ雇用不安などの経済悪化が影を落とす。将来の労働力減少や消費市場の伸び悩みを恐れる政府は、子育て支援に力を入れるが、改善の兆しは見えない。


■省庁が合コン開催、残業禁止も


 「帰宅して家族と楽しい時間を過ごしてください」


 2月17日の水曜日、午後7時前。韓国保健福祉省の庁内放送がこう呼びかけた。普段は多くの職員が働く時間だが、大半のフロアはもう暗い。「出産と養育に専念できるように」(同省)と1月から、毎月第3水曜日はこの時間に原則、強制消灯している。


 同省職員の1人当たりの子どもの数は、公務員全体の平均以下という。消灯は少子化問題の担当省として、模範を示そうと始めた独自の出産支援策の一つだ。


 独身職員の「出会いの場」づくりも企画。第1弾として今月22日には、ロッテ百貨店の独身社員と合コンを開く。子育て時期には勤務時間を柔軟にするなどの仕組みも整えた。李基日人事課長は「成果が出れば他省庁や民間企業にも参考になるはず」と話す。


 そんな意気込みをくじくように、韓国の少子化は進む。2月末に発表された09年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数、暫定値)は08年の1・19から下がって1・15と2年連続でマイナス。日本の1・37(08年)を下回り、経済協力開発機構の加盟国では最低だ。金融危機の余波などで結婚件数も減った。10年の出生率はさらに落ち込むとの見方が強い。


 女性の社会進出や、仕事と育児を両立できる環境の不備、晩婚化……。出生率が下がる構造的な要因は日本とも通じる。政府の09年調査によると「必ず子どもをほしい」とする未婚男女は約24%。05年には4割超あった。韓国ではさらに「教育費や住宅費などの負担の重さや、若者らの雇用不安が響いている」(韓国保健社会研究院の申潤貞副研究委員)という。


 「2人目の妊娠を報告した時、親や友人は『おめでとう』より『大丈夫?』でしたね」。ソウルで3歳の長男を育てる会社員の女性(38)は苦笑する。「頭がおかしくなったの?」。電話口での友人の言葉も忘れられない。


 だが、周りの反応は理解できる。経済的負担への不安は大きい。長男が今年から通う幼稚園も、納得できる内容の施設なら月100万ウォン(約8万円)程度も珍しくない。将来は塾代などもかさむ。学歴社会の韓国では幼少期から英語を習い、その後も複数の塾通いや留学は当たり前。月収の3~4割が教育費という家庭も多く、教育費支出の比率は日本の2倍以上とされる。


 雇用不安も大きい。97年の通貨危機を経て雇用環境は悪化。今年2月の若年失業率は10%に達した。経済的に自立できずに結婚や出産に踏み切れないケースが多く、職を持っていても将来に不安がつきまとう。


 「子どもを持つ予定は0%です」。4年前に結婚したIT関連企業で働くソウル近郊の男性(35)は言い切る。前の勤務先も同業だったが、経営悪化で退職。今の年収は5千万ウォン(約400万円)超と生活には困らないが、ずっと働ける保証はない。


 ここ数年、マンション価格を数倍に高騰させた不動産バブルや金融危機を目の当たりにしてきた。「格差の広がる韓国は今や階級社会。公務員なら別だが、今の自分が子どもを幸せにする自信はない」と話す。


■保育費支援など成果見えず


 韓国はかつて、高い出生率で知られた。政府は人口急増が都市の過密化などの社会問題を招くとみて、60年代から避妊指導などの人口抑制策を展開した。出生率は急速に下がり、現在約4870万人の人口は18年以降減少に転じる見込み。高齢化が進むスピードは日本やドイツを上回る。


 政府が慌てたのは00年代に入ってからだ。少子化が進めば、将来の労働力が減るうえ、内需の落ち込みで経済成長も鈍る。高齢化による財政負担の増加や年金財政の破綻(は・たん)にもつながる、などの危機感が背景にあった。


 06年に初の総合的な少子化対策をまとめ、保育費支援や育児休業制度の拡大、一定規模の事業所に託児所設置を義務付ける、といった対策を打ち出してきた。


 しかし、人気が高い公立の保育施設は不足し、育児休業などの制度も活用しにくい雰囲気が残る。保健福祉省の金竜洙・低出産政策課長は「対策なしではさらに悪化しただろうが、まだ目に見える改善の効果はない。制度の実効性を高め、共働きの中間層の負担軽減にさらに力を入れる必要がある」と話す。


 昨年11月には大統領直属の政府委員会が思い切った対策案を示した。幼児期の子育て負担軽減を図る「小学校入学年齢の1年前倒し」「子どもが3人以上の家庭への優遇拡大」などだが、賛否両論を呼んでいる。政府は今夏、少子化対策の新しい5カ年計画をつくるが、短期の改善は難しいとみられている。
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 少子化についてはこれまでも何度か言及してきたが、韓国でも少子化が進んでいることからも言えるように、この現象は経済が発展した先進国における必然的現象なのだろうという私なりの認識だ。
 政府が様々な試みをして、この流れを食い止めようとしていることを、一つ一つを批判するつもりはないが、どの試みも少子化を食い止めるという結果にはつながらず、徒労に終わると私は予想している。
 政府の考え方の中で、私が一番間違っていると思うのは、「お金がないから子どもが生まれない」という発想だ。お金がないから、お金を家庭に配ろうと対応しても、お金はあればあるだけ別の所に使われてしまうだけで、お金の有無が出生率に関係するとはとても思えない。事実、お金持ち家庭の出生率が高く、貧乏家庭の出生率が低いという統計は無い。
 子育てしやすい環境づくりのために保育園を作ろうという試みは、確かに、「子育てしやすい環境」には、寄与するが、それがダイレクトに出生率の向上に結びつくとは、私は思わない。それはお金持ち家庭の出生率が高いとは言えないと同じぐらいの相関関係だと思っている。
 なぜ私がこのように考えるかと言えば、一義的には、現代社会では、多様な行き方が認められているからだ。結婚しても子どもを生まなくてもいい。男が男を好きになってもいい。女が女を好きになってもいい。結婚せず、一生独身を貫いてもいい。
 ここまで多様化してしまえば、結婚して子どもが二人というモデルケース的家庭像が、実は特殊なケースなのだと思えてこないだろうか。
 それに昔であれば、親の打算から、子どもは自分たちが年老いた時でも生活していくための“保険”として期待できた。どんなに苦労して育てても、きっと自分の子どもは、将来、自分の面倒を見てくれるに違いないという計算があって、子育てしていた側面は、否定できないだろう。
 しかし今は、子どもを生み育てるべき世代が生きることに精一杯で、親の面倒など到底見てあげられない。つまり、自らの行き方からして、子どもが自分の保険になり得ない存在だと言うことを、身をもって知っている世代なのだ。保険にならない子どもなど、作る必要性がないのである。


 様々な要因が絡み合って、子どもは生まれない社会になっている。政治はいつ気がついて、お金がかかるだけで、効果が見込めない出生率向上を目指す少子化対策を止めて、真の少子化対策(出生率が低くても破綻しない社会の構築)に舵を切るのだろうかと、私は見守っている。


 今は様々なデータから、なぜ少子化が進んでしまうのか、その構造について考えた方が良い。
 私は前々から、都市の過密が問題だと言い続けてきた。都市には人が多すぎて暮らしにくいと。そしてその都市とは、ブラックホールのように多くの人々を引きつけ、飲み込んでいくが、都市からは子どもが生まれにくくなっている。統計を見れば明らかだが、都市の出生率は低く、田舎の出生率は高い。
 韓国もそうだが、日本もまた都市にあまりにも人口が集中した国土利用をしている。国土分散型の土地利用を進め、都市に人口を集中させることない国家運営ができれば、それだけで、少しは出生率向上に寄与するかもしれない。
 直接的な対策でなくても、間接的な対策が、結果論として、成果を出すこともある。古くて新しいテーマではあるが、都市の過密化を防止して、日本全体をもっと有効利用する方策を、今一度考えてみてはどうだろうか。


2010年03月25日