田中けんWeb事務所

江戸川区議会議員を5期18年経験
巨大既存権益組織に斬り込みます!

t_ken

日刊田中けん

力でテロは防げない

ロシア大統領「爆破テロ、けだものの犯行」 現場で献花
2010年3月30日10時18分 asahi.comより


 【モスクワ=副島英樹】モスクワの地下鉄で29日朝に発生した連続爆破テロ事件で、ロシアのメドベージェフ大統領は同日夜、最初の爆発現場となったルビャンカ駅を訪れ、38人の犠牲者を追悼し花をささげた。ノーボスチ通信によると、大統領は「けだものの犯行だ。どんな動機であれ、(テロリストを)見つけ出して壊滅する」と述べた。
 シベリア出張中だったプーチン首相も同日夜、モスクワに戻り、70人を超える負傷者のうち13人が収容されている病院を見舞いに訪れ、患者を励ました。同首相はこの日、犠牲者の遺族に100万ルーブル(約300万円)以上、重傷者には40万ルーブル(約120万円)などの支援をする決定に署名した。
 捜査当局は事件直後から、北カフカスのチェチェン武装勢力などイスラム過激組織の関与を疑っている。その後の調べでは、自爆犯とみられる女2人の遺体の一部が確認された。この女2人に付きそっていた女性2人と男性1人が事件に関与していると見て、行方を追っている。警察はこの人物たちの特徴を把握しているという。
 女性を実行犯に仕立てる自爆テロは、北カフカスの武装勢力が、肉親を殺された女性の報復意識を利用したり、若い女性を洗脳したりして多用してきた。こうした点からも、北カフカス系組織の関与の疑いが強まっている。
-------------------------------
 テロの実行犯に、女性や子どもが関わるような事態とは世も末だ。今回のテロでも、70人を超える負傷者が出て、大事件となった。
 私は決してテロを肯定する立場にはないが、この様な事件が起こる度に思うのは、大都市でのテロは痛ましく報道されても、戦地で行われている殺人行為については、全く報道されないということだ。テロを行った側の心情を想像すると、世界に自分たちの情報を伝えきれないやるせなさや、計り知れない事情が事件の背景にはあったのだろう。
 国家に対するテロとは反体制側の報復手段であって、国家が主体によって行われる戦争をテロとは言わない。最近では、テロ支援国家という概念が生まれ、国家もテロに関わるという認識になってきたが、これまでの常識から言えば、テロとは、国家ではない比較的小規模なグループや個人によって行われる、つまり「暴力を伴う弱者の抵抗手段」という認識であった。正確に言えば、「暴力にしか訴えられない抵抗手段」ということになろうか。
 テロを防ぐために、力を持つことは必要だろう。警察なり軍隊なりの強化も必要であることは否定しない。
 しかし、力によって力を押さえ込もうとするだけでは、報復の連鎖となって、テロが無くなるとは到底思えない。そこにはテロが起きてしまう背景にまで考察を及ばせ、その根本的な問題解決に至らなければ、「江戸の敵を長崎で討つ」という直接関係ない場所でテロが起こるという現象は、なくならない。
 今回のモスクワでのテロも、ロシアにおけるチェチェンでの紛争が大元になっていることは間違い無い。では、ロシアはチェチェンで何人のチェチェン人を殺してきたのだろうか。その報道は、これほど大きく取り上げられることはない。
 私たちは、常に、報道の限界と向き合って、世の中の情勢を推察しなければならない。ありのままの世界情勢など、伝えられるはずもないが、一方だけを報道して一方は報道しないという報道の任意性を、仕方が無いことだと半ば容認したとしても、それを補う想像力は、誰もがそれを養っておかないと、報道する側の思うとおりに、世論は簡単に操作されてしまう。
 どちらにしても、テロを行う側に視点も持ち合わせていないと、いかにして社会からテロを無くしていくかという理想は実現できない。
 3/30付けの日経新聞編集委員のテロに関するコメントを最後に紹介して、自分の意見としたい。
-------------------------------
 社会や経済構造に根ざしたテロを、力で抑え込めないことは実証されている。同様に、凶悪犯罪に至る「過激化」も排除や隔離では防げない。行政やボランティアが孤立した若者に積極的に働き掛けるような仕組みをつくり、一人ひとりが孤立感や敗北感を抱き続けなくてすむ社会を目指すしかない。(編集委員 坂口祐一)


2010年03月31日