田中けんWeb事務所

江戸川区議会議員を5期18年経験
巨大既存権益組織に斬り込みます!

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日刊田中けん

私が認める「少子化対策」

 何度も取り上げた話題ではあるが、私の立場を再度確認したい。
 私は、少子化をそれほど問題視していない。多様な生活スタイルが認められた現代にあって、少子化は当然の帰結であって、驚くような社会現象では無いという評価である。
 結婚して2人の子どもを産み育てるだけがモデルケースではない。
 結婚して、1人の子どもしか産まないケースもある。
 結婚して、子どもを産まないケースもある。
 結婚しないことも自由だ。
 男性が男性を好きになったり、女性が女性を好きになったり、一生独身で過ごしたいと言うことも、本人の望み通りに叶えられる社会である。
 こんな社会で、合計特殊出生率が、2.1を大きく割り込むことは当然あり得る現象だろうと、私は思っている。
 人生の多様化を認める社会から、「結婚して子どもを二人産み育てなければならない」というモデルケースを強制する社会へは、今さら逆戻りできない。

 この前提を確認した上で、社会で問題視されている出生率向上について論じてみる。
 世間では、やれお金が無いから子どもが産まれないとか、保育園が足りないから子どもが産まれないなどと言う議論が盛んである。
 しかし、どちらも子育てしやすい環境を作るという「子育て論」としては有用であろうが、出生率増を望む「少子化対策」としては、無効な策となって結果を出せずに終わるだろう。それに前者も後者も、相当の財政支出を必要とする政策となる。今の日本に、そんなに多くのお金はない。


 そんなことを日常的に考えながら、本を読んでいたら、「あーこの人は、よくわかっている」と私が同意できる意見を持った人がいたので、その人の説を紹介する。
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 プレジデント 2010.4.12号 P.46
 コマツ 板根正弘会長
「日本の少子化問題は避けて通れない」と言われるが、本当にそうか。コマツには年一回、各地の工場を地域に開放する行事がある。コマツ発祥の地、石川県の工場では従業員家族のおじいちゃん、おばあちゃんが連れてくる孫の人数が多く、どこが少子化なのかと思うほどだ。
 そこで、社内の各事業者の既婚女性の子供の数を調べた。東京本社は0.5人と低いが、石川の工場は2.0人と多かった。石川ではおばあちゃんが子供の面倒を見てくれるなど、子育て支援の受け皿がある。賃金も地域では高い方で経済的に余裕がある。ここに少子化問題を解くヒントがある。
 日本は国内総生産(GDP)は世界第2位だが、国民1人あたりのGDPは米英仏独より低く、18位(06年)だ。なぜ低いのか。私は各国の都市化率と相関があるのではないかと考えた。都市人口に占める比率で英国は90%、米国は82%、日本は66%だ。欧米は都市が分散しているが、日本は一部の大都市に偏っている。欧米は大企業の本社が各地に散在しているが、日本の大企業は大半が東京本社だ。
 各都道府県の人口の増減を調べると、1人あたりのGDPの低い県ほど人口が減っていた。若い人が東京へ移り、結果、出生率が低下する。最悪のスパイラルだ。打開策の1つとして、大手企業は本社を地方に移す。すると、各地で環境面と経済面、両面で出生率が高まる条件が揃う。それには各県が法人税率等で優遇措置をとれるようにするなど、裁量の移譲が不可欠だ。だからこそ地方分権は、焦眉の急なのだ。
 これはどの研究書にも書かれていない。私が石川の工場開放日に子供たちに囲まれた体験を通じて問題意識を持ち、考え出した新しい国作りのあり方だ。
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 さすがに会社の経営者だけに鋭い問題意識であり、的確な問題解決法を提案されている。私もこの様な考え方に、ほぼ同意したい。
 しかし、一点だけ間違っていることがある。最後の「どの研究書にも書かれていない」というのは、自画自賛である。少子化に関する研究者は、統計的な現象面として、以下の3つの因子が少子化に大きく影響を与えていると結論づけている。
① 都市では子どもが少なく、田舎では子どもが多い。
② 女性が高学歴になると、子どもは少ない。
③ サラリーマン家庭では子どもが少なく、自営業の家庭では子どもが多い。
 この3つだという。保育園の数とか、家庭が金持ちか貧乏かとか、夫かどれだけ家事の手伝いをしてくれるかなどの要素は、少子化との関連性が低いと言われている。
 私は研究者が発表した、以上の3つの統計的な現象を信じている。だからこそ、コマツ会長が発言したように、各種企業の本社機能を地方都市に分散化すべく、地方の法人税等は低くしようという提案は、それなりに有用性が高い政治的テーマなのだろうと思う。もちろん、これは人口増を求める少子化対策としての話であって、それ以外の様々な要素を加味すれば、単純に地方の法人税を引き下げることに、私が賛成すると言うことでは無い。
 ただ、私がこれまで何度も繰り返し言い続けてきた、都市の過密化を避けよう、東京一極集中やめようという提案は、図らずもコマツ会長の主張とかぶる。


 よく識者の中には、日本の企業に活力を持たせるという理由で、
「法人税を下げて、消費税を上げよ」
 この様に提案する人を多く見かける。
 この提案についての良し悪しは、私にはわからない。賛否を問われても、答えられない。
 だから、仮に「法人税を下げよ」という提案が正しいとしても、その場合は、限定的に、コマツ会長が言うように、地方の法人税は下げた方が良いかもしれないが、東京や大阪の法人税は下げる必要はないと、私は答えることにする。
 とにかく、東京一極集中は良くない現象だ。日本は北海道から沖縄までで、1つの国である。東京だけが日本であるはずがない。それならば、東京ばかりに人口が集中している現状を何とか変えていこうとする私の説が、まともな発想だと思うのだが、この考え方は自画自賛だろうか。


2010年04月04日