田中けんWeb事務所

江戸川区議会議員を5期18年経験
巨大既存権益組織に斬り込みます!

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日刊田中けん

アニメ「薄桜鬼」?新選組奇譚?第5話

 奇譚(きたん)とあるように、このアニメ「薄桜鬼(はくおうき)」は新撰組に関する史実を多く取り入れつつも、史実とは異なった独自の不思議話も一緒に展開する物語である。
 第5話では、伊藤甲子太郎が新撰組に加入する。局長の近藤勇は優秀な隊士が増えると、伊藤甲子太郎を歓迎する。その一方、副長の土方歳三をはじめ他の隊士は、伊藤甲子太郎を警戒する。伊藤甲子太郎は水戸の流れをくむ勤王思想の持ち主であり、幕府中心で考える佐幕派の新撰組とは相容れないと考えていたからだ。
 以下、夕暮れ時、とあるお寺の縁側に伊藤甲子太郎を快く思わない隊士たちが集まり、雑談しているシーンから。


原田左之助「山南(さんなん)さんもかわいそうだよな。最近は隊士たちからも避けられてる」
雪村千鶴「避けられてる?」
永倉新八「誰に対してもあの調子だからな。隊士もおびえちまって、近寄りたがらねーんだ」
原田左之助「昔はあーじゃなかったんだけどな。親切で面倒見が良くて」
永倉新八「穏やかで優しくて。表面的には」
原田左之助「でも腹ん中は真っ黒で」
永倉新八「そうそう真っ黒」
永倉新八・原田左之助「ウハハハハハハ」
沖田総司「冗談でも言わないと、やりきれませんよね」
原田左之助「それにしても伊藤の野郎、弁が立つだけに腹が立つ」
永倉新八「気取っているっつーか、人を見下しているっつーか」
沖田総司「僕も好きじゃないな。相当な剣の使い手であることは認めるけどね」
土方歳三「気にくわねー」
沖田総司「じゃー、土方さんが返品してきてくださいよ。新撰組に、こんなのいりませんって」
土方歳三「近藤さんが許可するわけねーだろう。すっかり伊藤さんに心酔しているみてぇだしな」
沖田総司「もう~全く役に立たない人だなぁ。無茶を通すのが鬼副長の仕事でしょうに」
土方歳三「だったら総司。てめいが副長やれ」
沖田総司「うぇへへへへへ。いやですよ。そんな面倒くさい」
雪村千鶴「斉藤さんも伊藤さんは苦手なんですか」
斉藤一 「様々な考えを持つ者が所属してこそ、組織は広がりを見せるものだ。しかし無理な多様化を進めれば、内部から瓦解することもある」
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 創作とはいえ、斉藤一のセリフは、まるで、移民を受け入れるべきか、それとも受け入れぬべきか、現代日本の悩める指導者に対する訓辞のようにも聞こえる。


 組織の運営者にとっては、組織を大きくすることが必然的な目的となる。会社組織であれば、利潤の追求が共通の目的となるが、政治結社である政党は会社組織と全く同じではない。組織を大きくしようと思えば、色々な考えを持った人間が集まってくる。色々な考えを排除してしまえば、組織は広がりを持たない。
 政党は必然的に思想を持って生まれ、その思想を大切にする。しかし、その思想に固執していては、広がりを持たない。大きな組織にはならない。よって社会には影響を与えられない。
 民主党と自民党という組織は、政権政党を目標としていたため、ある意味誰でも受け入れてきた。そのような大政党と、思想を優先して小さく産まれてきた新党とでは、組織の大きさもさることながら、内部における多様化と同一化の違いを組織誕生の背景から読み解くことができる。バランスを上手く調整して、内部崩壊せずに多様化できる組織だけが、大きくなり天下を取ることができるのだ。


 ご承知の通り、この後の新撰組は粛清に次ぐ粛清で、団結力と引き替えに自ら組織を小さくしていってしまう。
 ウィキペディア(Wikipedia)には名前が書いてある者だけでも、以下の人数だけいる。
近藤・土方体制をつくりあげる過程での粛清 16名(不確かな情報も含む)
分隊行為・背反行為の粛清 13名
倫理・道徳の徹底による粛清 5名
 以上の人物も含め、鳥羽伏見の戦い以前に粛清された隊士は41名である。この様に、現代に伝わる勇ましいイメージとは別に、隊士の多くは内ゲバによって命を落としていったという事実がよくわかる。


 政治家が離合集散する過程では、政党という組織から出て行く者もあらわれる。出て行く者に「除名」という汚名を着せ外部へと放り出す様は、私から見れば新撰組のやってきた内ゲバと変わらない。
 おそらく、政治に携わる者にとっての一番の敵とは、本来の敵ではなく、味方から敵へと寝返った、かつて一番近しかった者のことなのであろう。


2010年05月06日