田中けんWeb事務所

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日刊田中けん

アニメ「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」(2010年)に使われる多国籍な素材

 少女5名をもって小隊とする軍隊の物語である。第1121小隊と呼ばれるこの部隊は、国境防衛と警備を主な任務としている。国境に位置しながらも、人員も補給もままならならず、一部からは「お荷物部隊」とも呼ばれている。彼女たちと、国境の村に住む住民達との交流を中心に物語は展開する。
 「戦場のヴァルキュリア」のような舞台設定で、「けいおん」の主人公達が登場するような物語である。小隊とはいえ、平和な日常的な雰囲気は、「灰羽連盟」にも通じるところがある。


 監督は神戸守氏である。2004年に「エルフェンリート」という作品を発表している。この作品でもオープニングには、クリムトを模倣して主人公を配置したオープニングを創っている。
http://www.youtube.com/watch?v=QwFXPZIwuMI&feature=related


 今回の「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」も同様に、やはりクリムトを模倣しての作品になっている。
http://vlog.xuite.net/play/bWNBbVhyLTI2MDM2OTIuZmx2


 クリムトの絵画がそうであるように、オープニングにクリムトを模倣すると言うことは、この作品にエロス(性)とタナトス(死)を同時に感じさせてくる作風を暗示させる。
 どんなに「けいおん」のようにポップな少女たちが、平凡で平和な日常生活を過ごしている様を描いている作品とはいえ、そこは軍隊である。クライマックスにかけて、物語は徐々に緊張の度合いを高めていく。


 舞台は、国境に面した小さな村となっているが、その村のデザインは、スペインのクエンカを明らかに模倣して作られている。このアニメを見たときに、どこか懐かしいというか、過去に見たことがあると思ったのは、私がクエンカに訪れたことがあるからだ。クエンカは切り立った渓谷と崖が織りなす起伏に富んだ美しい古都である。町全体が世界遺産に登録されている。


 この様にどう見ても、ヨーロッパの1都市のように見える村ではあるが、主要な登場人物の名前は漢字表記である。ちなみに主人公は、空深彼方(そらみ かなた)という名の少女である。敵国の兵士が侵入してきて保護したときに、その敵兵が話した言葉がドイツ語であった。(ドイツ語の才がない私には“ダンケ”しかわからなかったが)また、作中に登場する表記言語は、フランス語を基本にして、たまに漢字が使用している。
 作中では、ドイツ語を敵国の言語である「ローマ語」と呼称し、自国ヘルベチアにおける記述語には「フランス語」を用い、一部漢字を使う場合は、その漢字を「イデア文字」と呼称して、特殊な文字扱いとしている。
 日本での放送を前提としている作品なので声優は皆、その国の母国語を日本語として話すので、あまり言語の詳しい説明を作品中で行うと、つじつまが合わなくなってくる(フランス語表記で書かれた言葉が、なぜ日本語で口述されているのかなど)のだろうが、私は日本人なので、ちょっとした漢字でも読めてしまうので、物語の理解の一助になっている。


 それにしても、このようなヨーロッパテイストの作品であっても、ところどころに漢字が出てくると新鮮な気分になる。ましてや、ドイツでもない、フランスでもないスペインの一地域クエンカがモデルとなった舞台なのだ。
 この作品が、声優による言語を変え、世界に流布されたときでも、私と同様に、どこかで自国文化との接点を見つけ懐かしく思うに違いない。その懐かしさが親しみやすさに、きっとつながっていくのだろう。
 作中には、アニメのお約束のように少女達が温泉に浸かるシーンがある。このような作為的シーンは、それが外国人には何かわからずとも、日本人ならばわかる日本文化の意図的な宣伝でもある。


 一つのアニメの作品が、多方面の文化を下敷きに構成されていることから、時には自国文化の宣伝に、時には他国文化の紹介になっている。日本のアニメはこのように海外へと羽ばたいていくという一つの例である。日本の文化は、他の何よりも多く、アニメを通じて、世界に紹介されている。


2010年05月17日