田中けんWeb事務所

江戸川区議会議員を5期18年経験
巨大既存権益組織に斬り込みます!

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日刊田中けん

「率」という考え方のマジックに惑わされるな

 12月になって忘年会シーズンである。
酒の席なので、色々な事が話題となる。


 本日の忘年会では、「人がガンで死ぬことはいいことだ」
という命題が提案された。
 手元のデータによると、男性のガン死亡率は26%。女性のガン死亡率は16%。
 日本では、多くの人がガンで死んでいる。
 それなのに、「ガンで死ぬことは良いこと」とはどういう事なのか。


 つまり提案者の主張を簡潔にいうと、
ガンとは老化病の一種だという。
長寿である者が多くかかる病気であり、
若者はあまりガンでは死なない。
だからこそ、多くの人たちがガンで死んでいるという事実は、
それだけ多くの人たちが、
長命で寿命を終えたという事実の証明だというのだ。


 逆に国民のほとんどはガンでは死なないという国があるという。
そのような国は、内戦と飢餓で多くの人が死ぬ国だという。
しかも例外なく、平均寿命は、日本と比べて短い。
 ガンで死亡する人が少ないからと言って、
果たしてこの様な国の国民は幸せだと言えるのだろうか。


 確かに世界の統計を見ても、
先進国と言われるような国の平均寿命の伸びと、
ガン死亡率の増加は比例している。


 ガンにせよ、何にせよ、人一人の死は、
悲しむべき事だが、それが殺人や自殺のような死ではなく、
比較的長命のお年寄りに多く出現するガンでお亡くなりになると言うことは、
提案者が言うように、多くの人たちが長生きできた証明だとも言え無くない。


 ガンを撲滅するための研究はすべきだが、
一般的に言われるほど、
ガンで死ぬことは、トータル的に考えれば不幸であるとは言い切れない。
そうも思えてくる。


 このように我々は日常的に、便利なので「率」という考え方をよくするが、
ここには大きな落とし穴があることに注意しないといけない。


 以下、通俗的な命題に対する価値観に反する価値感を提案する。


「食糧自給率40%」
 これは日本の食卓が外国から輸入した食料によって豊富にあるという証拠である。
 日本は食糧自給率を下げることで、今の食料の豊かさを手にしてきた。


「日本は家族間の殺人率が全体の半数以上でとても高い」
 これは家族間の殺人事件数がとても多いことを意味しない。
 むしろ、それよりも見知らぬ人に殺される通り魔殺人のような事件が、
とても少ないことの証明でもある。
 “率”は絶対数を意味しない。
 家族間殺人率がとても多い日本とは、
夜道を歩いていてもいきなり襲われ殺される可能性が、
低い国であるという証明でもある。


「日本は男性の自殺率がとても高い」
 統計を取る年によって、若干異なるが、
例年、自殺数はだいたい概算で、以下の通りになる。
 自殺者は全体で、32,000人。男性は24,000人。女性は8,000人。
 確かに、絶対数だけで言えば、日本人男性は数多く自殺しているが、
男性が多く自殺するのは、世界的傾向であり、
中国を除いて、ほぼ全ての国は男性の方が自殺率は高い。
 しかし、これを男女別で国際比較すると、
 男性の自殺率は、高い方から数えて、第6位ぐらいであるのに対して、
女性の自殺率は、高い方から、1位中国、2位日本、3位韓国。
 この様になっている。
 日本人女性は、国際比較で言えば、結構な数、自殺するのだ。


「率」という考え方は、物事を見やすく、理解しやすいようにしてはくれるが、
それに付随する価値観を鵜呑みにしてしまうと、
全体像を大きく歪めて理解することになってしまう。


>数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う。
 このような名言がある。


 統計資料を持ち出して、何かの説明を聞くときは、
このような「率」のトリックにも注意しながら、話を聞きたいものである。


 とりわけ今は「食糧自給率40%」がとても怪しく導かれた数字なので、
私は大いに注意することにしている。


2011年12月06日